-
- [陸上部員1]
- 「おーい、貴一!
こっちに来てくれないか?」
- [一]
- 「ああ、分かった。
えっと……」
- [ナツコ]
- 「私はもう帰ります。
今日はありがとうございました」
- [一]
- 「ああ。それじゃあ」
- 練習は大変そうだけど……
陸上部のことを話すみんなの顔は、
楽しそうにキラキラしてる。
- 一センパイもみんなから、
とても信頼されてるみたいだし……
- もう一度、
走るのを始めるのも良いかもしれない。
-
- [ナツコ]
- 「な、何をするんですかぁ~!」
- [一]
- 「はははっ、涼しくていいだろう?」
- [ナツコ]
- 「ふふっ、確かに」
- (こんなに楽しそうな一センパイは初めてかも)
- [時任]
- 「ひゅーやるじゃん、ニノ先輩!
楽しそう~。
……そうだ」
- [時任]
- 「おーい、七緒~」
- [桐生]
- 「なんですか、時任先輩……」
- [時任]
- 「おりゃっ」
- [桐生]
- 「う、うわぁ!?
な、何をするんですかぁ~」
- [時任]
- 「ははっ、七緒がずぶ濡れだぁ~」
- [桐生]
- 「もう、時任先輩!」
-
- [男子生徒1]
- 「チカ、見つかっちゃったな」
- [時任]
- 「えぇ~今日は走りたくない気分なんだよ」
- [ナツコ]
- 「そんなのは聞きません」
- [時任]
- 「たまには休んでもバチは当たらないでしょ?」
- [ナツコ]
- 「当たるよ」
- [時任]
- 「おぉ~怖い。
ナツコちゃん、かわいい顔が台無しだよ」
- [男子生徒2]
- 「チカがたじたじだ」
- [男子生徒1]
- 「チカ、部活行けよ~」
- [時任]
- 「えぇ~まだおしゃべりしたいよぉ~」
-
- [時任]
- 「お、おい!」
- [桐生]
- 「わっ!?」
- [時任]
- 「いっつ~……」
- [桐生]
- 「ううっ……」
- [ナツコ]
- 「ふ、2人とも大丈夫?」
- [時任]
- 「いきなり立ち上がんなよ、七緒!」
- [桐生]
- 「だって、いきなり変な声が聞こえて~」
- [時任]
- 「変な声って失礼だなぁ~。
優しく起こしてあげたのに……」
- [桐生]
- 「うぅ……。
びっくりしましたよぉ~」
- [桐生]
- 「楽しい夢だったのに、
オカマのおばけに
追いかけられる夢に変わりましたよ」
-
- [熊代]
- 「よし来い、橘! オレを抜いてみろ!」
- [橘]
- 「――っ」
- (わぁっ、すごく白熱してる!)
- 試合が始まるギリギリまで、
やる気のなさそうに見えた橘君だったけど……
- いざ試合開始のホイッスルが鳴ると、
まるで別人のように俊敏な動きでコート内を駆けまわる。
- (熊代センパイも、的確にチームメイトに指示を出しているし……)
- [一宮]
- 「橘のプレイ、久しぶりに見たけど、
やっぱあいつはすげーよな~!」
- [佐鷺]
- 「そうですね」
- [仁科]
- 「ふん。橘なんて、あんなヤツ……あっ」
- [橘]
- 「――よしっ」
- [四ツ谷]
- 「くっ、抜かれたか……」
- [熊代]
- 「ドンマイ、次取り返すぞ!」
-
- [子ども1]
- 「おおお~~っ! すげー!!」
- [子ども2]
- 「どうしたら、あそこに届くぐらいおっきくなれるの?」
- [熊代]
- 「それはな~。
毎日よく寝て、よく食べること! これが一番だ」
- [子ども1]
- 「ホント~!?」
- [子ども2]
- 「それじゃあオレ、いっぱい食べる! いっぱい寝る!」
- [熊代]
- 「ああ! そうしろそうしろ!」
- [子ども1]
- 「ねえねえ、オレにもドリブル教えて!
ダンダンダンってやるやつ!」
- [熊代]
- 「ああ、いいぞ。
いいか、ドリブルのコツはな――」
- (子ども達にバスケを教えているのかな?
すごく楽しそう……!)
- (それになんだか子どもたちへの接し方が自然で……
子どもたちのお父さんみたい、なんて思っちゃったり)
- [熊代]
- 「……とまあ、こんな感じで……あれ?
小日向!」
- (あっ! 気付かれちゃった)
- [ナツコ]
- 「こんにちは、熊代センパイ!」
-
- [橘]
- 「……よし」
- [ナツコ]
- 「よ、『よし』じゃないよ!
こんな所に寝られたら困る……っ」
- [橘]
- 「居心地良い……ふああ」
- [ナツコ]
- 「も、もう……!
こんなとこ、誰かに見られたら……」
- [橘]
- 「どうせ誰も来ないだろ」
- [ナツコ]
- 「そうなの? ……そういえば、
この屋上いつも橘君しかいないね」
- [橘]
- 「……俺がいるから来ないんだろ。
一部じゃフリョーだと思われてるらしいから、俺」
- [ナツコ]
- 「えぇっ、そうなの?」
- [橘]
- 「ああ。1年にはもっとフリョーっぽいヤツがいんのにな」
- [ナツコ]
- 「……それって、お姉ちゃんの言ってた
吹奏楽の人かなぁ……?」
- [橘]
- 「ああ、多分それ……」
-
- [ナツコ]
- 「こっ……これは……」
- [佐鷺]
- 「…………」
- [桐生]
- 「あ、あはは……」
- [ナツコ]
- 「え~っと……抽象画? なのかな?」
- [佐鷺]
- 「……れっきとした静物画です」
- [ナツコ]
- 「そ、そうなんだ……。
えーっと、モチーフは……ブロッコリー?」
- [佐鷺]
- 「……花です」
- [ナツコ]
- 「あ、そ、そっか!
じゃあ……こっちの細長いのは、魚肉ソーセージかな?」
- [佐鷺]
- 「……どうしてそうなるんですか。
ワインボトルですよ」
- [ナツコ]
- 「あ~、な、なるほどね~。
言われてみれば、確かに……。
ええっと……新しい感性って言うのかな?」
- [佐鷺]
- 「……てきとうな事を言うのは、
やめてもらえませんか」
- [桐生]
- 「ま、まあまあ、佐鷺君……」
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