【依都】「んで、昔話もいいけどさ。そろそろ焦らすのはやめて、新曲を聴かせてよ。俺、さっきから楽しみにしてるんだけど」

【時明】「焦らしてたつもりはないよ。昔話を話し始めたのは依都でしょ」

【時明】「準備は出来てるからちょっと待って」

オーディオの前に向かい、何かの操作をした後……。

【時明】「……それじゃ、流すよ」

時明さんは、オーディオのスイッチを入れた。
流れ始める曲に集中する。

ドラマティックなイントロから始まり、ぐんぐんスピードを増していく疾走感、印象に残る美しいサビのメロディ……。
どこまでもKYOHSOらしい、突き抜けるような激しさ。
でも、その奥に、包み込むような優しさを感じる。
そんな曲だった。

聴き終わった後、私は知らずにつめていた息を深く吐きだす……。

【依都】「……良いよ。これ、すっごく良い!うん……うん。なんか色々イメージ湧いてきた!」

【このは】「私もそう思います!今まで聴いたKYOHSOの曲の中で一番好きかもしれません」

【時明】「そう。2人にそう言ってもらえたら作った甲斐があるよ」

【依都】「時明が曲を作り直すなんて初めてだからどんな感じになるかと思ったけど、この間のよりずっと良いじゃん」

【時明】「依都のお気に召したようで何よりだよ」

【依都】「よ~し、作詞は俺に任せろ!さっそく帰って取り掛かるから。時明、音源頂戴」

【時明】「そう言うと思って準備してあるよ。はい」

【依都】「サンキュ~。じゃ、オレ帰るわ」

【このは】「は、はい、お疲れ様です!」

デモ音源を手に、依都さんは満面の笑みで嵐の様に去っていった……。

【このは】「帰っちゃった……」

【時明】「嵐みたいだったね」

【このは】「そうですね」

【時明】「……でも気に入ってもらえて良かった」

【このは】「時明さん……」

溜息を吐いて、時明さんはソファに身を沈める。
そんな彼の姿が少し意外だった。

【このは】「本当にいい曲だと思います。お疲れ様でした」

【時明】「うん。……ありがとう。お前にそう言ってもらえて本当に嬉しいよ」

時明さんは、力の抜けた笑みでそう言った。
何故か、その表情に胸がドキリと鳴る。

【このは】「……じゃあ、私もそろそろ帰りますね」

落ち着かない気分になりかけて、慌ててソファを立とうとすると……。

【時明】「待って」

時明さんが、私の手を取っておしとどめた。

【時明】「せっかく来たんだから、少し話をしない?」

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