【このは】「でも、どうしてここに?」
【優】「……と思って」
【このは】「えっ……」
【優】「……あんたが、喜ぶかなって」
【このは】「…………」
【優】「何か言えよ」
【このは】「優さん……私のために?」
【優】「他に誰がいるんだ」
【このは】「そ、そうですよね。
でも、どうして……」
【優】「たまには、喜ばせるような事がしてみたかった」
優さんが、少しでも私を想ってくれていた……
その事が、私の胸を痛いほど締め付けた。
嬉しくて、抑えようとしても高揚してしまう。
震える指を隠そうと拳を握って、にやけないよう唇をきゅっと結ぶ。
【優】「本当はもっと早く連れてきてやるつもりだったんだ」
【このは】「でも優さん今日はクライアントのところへ行くって」
【優】「……」
【このは】「相手は大丈夫だったんですか?」
【優】「今日は断った」
【このは】「ええ!?」
【優】「どうしても無理だって、直接会って断った」
【このは】「だ、大丈夫だったんですか?」
【優】「大丈夫じゃない」
【このは】「えぇ、じゃあ……」
【優】「怒られたし……客が1人減った。
大口の客だったけど、仕方ない」
そう言いながらも、優さんの顔はどこか晴れ晴れとしていた。
【優】「んで、片付いたからあんたに電話した。
なのに電話に出ないしな」
思い出したらしく、優さんはみるみるうちに不機嫌になった。
【優】「謝れ」
【このは】「えっ……」
【優】「この寒空の下、探してたオレに謝って」
【このは】「すみません」
【優】「事務的すぎる。もう1回」
【このは】「ごめんなさい」
【優】「可愛くない。もう1回」
【このは】「可愛く……うぅ……、……ご……ごめんね?」
【優】「仕方ない、許す」
優さんは納得して、サングラスを押し上げた。
【優】「遅くなったけど、クリスマス、しよう」
【このは】「いいんですか……?」
【優】「最初からそのつもりだ。
さっさとして」
【このは】「は、はい」
先を歩き出した優さんの後を追う。
今、自分の身に起きてることが信じられそうになかった。
(夢を見てるの……かも。
だったらもう少し夢を見ていたいな)