【このは】「あの!」

【優】「何だ?」

【このは】「私……短い間だったけど、優さんとここで一緒に暮らせて楽しかったです」

【優】「オレも、だ……」

【このは】「いろいろあったけど、今日までの事、ずっと忘れません」

【優】「まるで最後みたいな言い方だな」

【このは】「あ……あはは。でも、きっと優さんとはもうこうして一緒に暮らしたり出来ないですから……」

【このは】「私達は恋人同士じゃないですし……」

【優】「……霧下」

【このは】「だから、私にとっては……」

(最後なんて言いたくない。また優さんと何でもない事で笑ったりしたい)

(また優さんと一緒にご飯が食べたい。優さんと……離れたくないっ!)

頭には浮かんでも、口から出てこない。

どうしていいか分からないでいると、優さんは鳥かごを置いてこちらへ近づいた。

そして、そっと手のひらで私の目を覆った。

【このは】「優さ――」

【優】「……」

目隠しされたままのキスは、あの日と同じ、優しいキスだった。

たまらなくなって涙が零れ落ちる。

何故か、もう二度と会えなくなるような気がした。

見えなくても今優さんがどんな顔をしているか分かる気がした。

私の唇に灯された熱は、一瞬で冷えてまるで夢のように消えていった。

【優】「バイバイ」

柔らかな感触に呆然としていると、優さんの手が離れる。

けど、その時には優さんは背を向けて玄関へと向かっていた。

【このは】「ま、待って……!」

【優】「来るな!」

【このは】「っ!」

【優】「…………来ないで、くれ」

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