【仁菜】「――……」
ハル君の唇に、自分のそれを重ね合わせる。
生まれて初めてのキス。
初めて触れた愛しい人の唇は、とても柔らかく、わたしの胸を熱くさせた。
……もっと、触れていたい。
そんな欲求が、胸の底から沸き上がる。
それを抑えながら、わたしはゆっくりと唇を離した。
言葉もなく、ただただ驚いた様子で、わたしを見つめるハル君。
その瞳を覗き込みながら、わたしは自分の想いを打ち明けた。
【仁菜】「そんなことを言われたら……わたしでもハル君の王子様になれるんじゃないかって、期待しちゃうよ……」
【仁菜】「でも……わたしは、しょせん女だから。ハル君を守れる、完全な王子様にはなれない」
自分の言葉が心に跳ね返ってきて、ぐさりと抉る。
現実を認めなければいけないことが苦しくて、つらくて、涙がじんわりと滲んだ。
【宗太郎】「仁菜ちゃんは……私の王子様になりたいの?」
【仁菜】「……そう、だよ」
【仁菜】「わたしは、ハル君のことが……好きだから……」
【仁菜】「友達なんかじゃなくて……ハル君に、恋をしてるから……」