わたしは両手で、芹君の頬を包み込む。
思い切り引き寄せて、彼の唇に自分のそれを重ねた。
今まで、何度も唇を重ねてきたけれど……自分から彼を求めたのは、これが初めてだ。
芹君の唇が、微かに震えているのを感じた。
この震えが芹君の弱さを表しているのかと思うと、こんな事態だと言うのに、喜びを感じた。
ようやく、芹君の本当の心に触れられた気がしたから。
ずっと踏み込むのが怖かった、芹君の心。
それは想像よりもずっと弱くて、頼りないものだった。
唇を離し、呆けた様子の芹君の顔をじっと見上げる。
そして……自分の正直な想いを、告げる。