ハル君は、以前そうしたのと同じように
わたしを背中から抱きしめ、優しく頭を撫でてくれる。
【宗太郎】「謝る代わりに、お礼を言わせてね。
ちーちゃんのこと、さくらちゃんのこと、
本当にありがとう」
【仁菜】「ううん……。
役に立てたならいいんだけど……」
【宗太郎】「あなたがいてくれて、本当に良かったわ」
(ハル君……)
その一言に、救われた想いがした。
【仁菜】「……ハル君にそう言ってもらえて、わたしも嬉しいよ」
気持ちを告げると、
耳のすぐ近くでハル君が微笑む息遣いが聞こえる。
それから彼と「おやすみなさい」の挨拶を交わして、
目を閉じた。
その瞬間、疲労感がどっと押し寄せてくる。
今日は、檜山さんと話そうと決めて
一日中気を張っていたので、
すっかり疲れ果ててしまった。
(でも、苦労した分だけ……
ううん、それ以上に価値のある夜だった)
(檜山さんから本音を引き出すだけじゃなく、
珠洲乃君と、そしてハル君も、
彼に本音をぶつけることが出来た)
(2人の気持ちは檜山さんに届いてるはず。
きっと、Liar-Sはいい方向へ向かうって……
そう信じたい)
ふと、背中越しにハル君の寝息が聞こえてきた。
それを聞きながら、うっすらと目を開ける。
(ハル君も、やっぱり疲れてたんだろうな。
いい夢が見られるといいんだけど……)
そんなことを考えながら、
わたしを抱きしめる腕に触れる。
ハル君を起こさないよう、
そっと彼の腕の感触を確かめていく。
綺麗で女性的なハル君だけれど、
骨ばった腕はやっぱり男の人のそれで、
なんだか不思議な気持ちだった。
彼が男の人なのだと意識してしまうと、
また心臓が跳ねる。
(だ、だめ。
ハル君は女友達……女友達……)
わたしはあわてて自分に言い聞かせ、
暴れ出しそうになった鼓動を無理やり抑え込んだ。