【亜貴】「明るい曲だよね」

【理緒】「うん、玲音の言う通り、クリスマスらしいよね」

亜貴ちゃんは頷いて、まだタイトルも出来ていない曲を鼻歌で歌い始めた。

わずかに触れ合った腕、耳触りのいい鼻歌。

それらは私に伝わり、身体の中へと染み渡っていくようだった。

(なんだろう、こうしてそばにいるのはいつもの事なのに、ちょっと胸のところが熱い)

【理緒】「亜貴ちゃんは、いつも歌詞考える時ってどうやって言葉を選んでいるの?」

【亜貴】「メロディから受ける印象を言葉に落としてるんだ」

【亜貴】「なんて言えばいいんだろ……音のカケラを拾って、そこに名前をつけていく感じ、かな」

【理緒】「音のカケラ…」

【亜貴】「仮にも歌詞を考えてる人間なのに、上手く説明出来なくてごめんね」

苦笑しながら、また音に耳を傾けた。

【理緒】「歌詞、出来そう?」

【亜貴】「なんとなくイメージはあるんだけど、ちょっとどうしようかなって思ってるんだ」

【理緒】「そうなんだ」

その笑顔は困ったように見えて、私には、陰りがあるように思えた。

(この前のジャッジメントはすんなり書いてたのに、今回は、煮詰まってるのかな?)

(大丈夫かな? 心配だよ。何か声をかけてあげたい……)

【理緒】「亜貴ちゃんの歌詞、楽しみにしてるね」

【亜貴】「理緒ちゃんに楽しみにされたんじゃ、 頑張らないわけにはいかないね」

【亜貴】「この曲に合うような歌詞、考えるよ」

【理緒】「亜貴ちゃんならきっと素敵な言葉を乗せてくれるって信じてるよ」

私の言葉に亜貴ちゃんは優しく微笑んだ。

テキストを消す