【理緒】「私、久遠先輩には甘やかされてばかりだから……」
【理緒】「たまには私が先輩を受け止めたいです。私じゃ頼りないかもしれませんが……」
【久遠】「そんな事ねえよ。ありがとう」
久遠先輩は気が抜けたように微笑むと、私と距離をつめた。
【久遠】「じゃあ、遠慮なく甘えさせてもらおうかな」
【理緒】「そうしてください。……って、何をしたらいいのか分からないのですが……」
【久遠】「んー……そうだな。ちょっと、肩、貸して」
【理緒】「肩ですか? いいですよ」
【久遠】「ありがとう……」
そして、私の肩に頭を乗せる。
そのわずかな重みと感触が、私の胸に隠した淡い恋心に火を灯す。
それは、息苦しくなるほど甘美でとろけそうな感情を呼び起こした。
【久遠】「重くないか?」
【理緒】「全然、大丈夫ですよ」
【久遠】「そっか……」
そのまま久遠先輩は、海を見つめていた。
(久遠先輩、何を考えているんだろう……)
波の音と、肩越しに聞こえてくる久遠先輩の吐息が、心地良い。
【久遠】「俺、理緒といるのが一番好きなんだ」
【理緒】「どうしてですか?」
【久遠】「なんか、ホッとするんだよな。なんでだろう」
ときめきを必死に抑え、平静を装う。
【理緒】「ホッとしてくれるなら、これからも私に甘えてください」
【久遠】「優しいな、理緒は」
微笑んだ久遠先輩の顔に、かげりが見えた。
その口が何度か開いて、閉じて……細く息を吐き出す。