【玲音】「……ゴホッ……っ……」

【理緒】「えっ……!? 玲音、大丈夫!?」

慌ててベッドに駆け寄り、顔を覗き込むとベッドの中から玲音の手が伸びて、私の手を掴んだと思ったら、勢いよく引っ張られてしまい……。

気づくと、玲音のベッドの中にいた。

(玲音の顔が、ち、近い……っ!)

【理緒】「なっ、何するの……玲音!」

【玲音】「ははっ、そんなに怒るなって。こういう時くらい添い寝しろよ」

【理緒】「そ、添い寝って……」

【玲音】「いちいちうるさい。いいからそのまま大人しくしてろ……」

【理緒】「玲音……」

玲音は笑いながら、私の額にそっと自分の額を重ねた。

【玲音】「何かされると思った?」

意地悪な顔で見つめられ、私の頬は熱くなっていく。

【理緒】「れ、玲音……顔が近い……と、思う。そ、その……」

動揺して言葉がしどろもどろになってしまう。

【玲音】「ばーか、理緒には何もしないよ」

【理緒】「そんなの……知ってるよ」

【玲音】「ならそのまま、大人しくしてろよ」

玲音はホッと息を吐き出して、目を細めた。

【玲音】「理緒がそばにいると、ホッとするからさ……」

(ズルいな。そんな事を言われると、何も言えなくなっちゃうよ……)

【理緒】「う、うん……。これで玲音が、少しでも落ち着くなら……」

小さな声で呟き頷くと、玲音は嬉しそうな顔をしてから、心地よさそうに顔をすり寄せた。

【玲音】「理緒の体温、気持ち良い……」

【理緒】「そ、そうかな?」

(普段はこんなに事、言わないのに……。風邪で弱ってるから素直になってるのかな。だったら……)

私は腕を伸ばし、昔していたように玲音の背中をそっと撫でた。

【玲音】「それ……昔も、やってくれたよな」

【理緒】「玲音が最初に私にしてくれたんだよ」

【玲音】「そうだったっけ。まあ、オレ達ってどっちかが風邪引く度に、どっちかが添い寝してたもんな」

【理緒】「ふふっ、そうだったね。それで風邪うつされて、2人して風邪引いちゃった事もあるよね」

玲音も昔の事を思い出していたみたいで、優しい笑みを浮かべる。その笑顔はすごく幼く見えて、なんだか、あの頃に戻った気にさせられる。

【玲音】「理緒……まだ、離れるなよ。ちゃんとそばにいなきゃ、やだからな」

【理緒】「離れないよ。ここにいるから」

【玲音】「本当に……?」

【理緒】「うん……」

熱に浮かされた瞳が、私を見つめる。
その美しい瞳を見ているだけで、私の心臓は音を鳴らす。

玲音は熱い息を吐き出して、私の名前を呼んだ。

【玲音】「理緒……」

それは、距離を失くす魔法のようで、自然と顔が近づいていく。

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