【主人公】「ねえ、せっかくだからもっと海の近くまで行こうよ」
【龍之介】「あっ、おい……! 転ぶぞ」
【主人公】「大丈夫、大丈夫!」
背後で宮地君の戸惑う声が聞こえたけど、それには構わずに波打ち際まで駆け寄った。
宮地君は呆れながらもゆっくり私の後を着いてきてくれるのが分かった。
【主人公】「ほら……っ」
そして、後から遅れてやって来た宮地君に、はしゃいで水をかける。
【龍之介】「わっ、冷た……! お前、いきなり何をするんだ」
【主人公】「ふふっ……だって、せっかくの海だから やっぱり遊びたくなるでしょ?」
【龍之介】「気持ちは分からなくもないが、風邪を引くぞ……。それに、砂浜に座ってゆっくりすればいいだろ?」
【主人公】「やっぱり、宮地君って少し…………ジジくさいよね」
【龍之介】「何だと? 俺がジジくさい、だと……?」
【主人公】「ふふっ……、冗談だよ」
【龍之介】「いや、今のは冗談には聞こえなかった。 許さん……仕返しだ」
【主人公】「えっ……?」
その瞬間、私に少し水がかかる。
【主人公】「きゃっ……!」
すっかり油断して笑っていたら、宮地君に水をかけられてしまった。
【主人公】「ちょっと! もう、冷たいよ」
【龍之介】「何を言ってるんだ。先にかけてきたのはお前だろう?」
【主人公】「もう、お返し! ……えいっ!」
私も負けじと宮地君に反撃する。
【龍之介】「お、おい! こうなったら俺も負けてられないな。覚悟しろ」
それに対して宮地君もささやかな抵抗をして水を私にかけてきた。
【主人公】「わっ……、も、もう!」
【龍之介】「ははっ……、避けられたんじゃないのか?」
【主人公】「だって、不意打ちするから……。私も負けてられない! えいっ」
【龍之介】「なっ……、お、おい、少しは手加減っていうものをだな……」
【主人公】「勝負ごとに手加減はなしなんじゃないの? 星月学園弓道部の部長さん?」
【龍之介】「言ったな……。だが、その通りだ。それなら、本気を出してもいいんだな?」
【主人公】「ふふっ、宮地君、その恰好でかっこいいこと言っても意味ないよ」
【龍之介】「……ふっ、確かにな。……ははは」
なんだかおかしくなって私も宮地君も思いっきり笑い合った。
宮地君とこんな風に思いっきり笑いあったのは久しぶりな気がする。
【龍之介】「これからが本番だ……と言いたいところだが、このへんで止めておこう。びしょ濡れになる」
【主人公】「ふふっ……、そうだね。風邪を引いちゃいそうだし、このくらいにしておこうか」
【龍之介】「こっちに来い。少し乾かそう」
宮地君に手招きされて、2人並んで座った。
【主人公】「ふふっ、子供っぽかったけどすごく楽しかったよ」
【龍之介】「こんなにのんびりするのも久しぶりだな」