【主人公】「有李さんの分まで、私が郁を幸せにします」

そう言って郁を見つめると、郁は少し不満そう。

【郁】「ちょっと……、それは僕の台詞じゃない?」

【主人公】「たまにはいいでしょう。 有李さんの前でくらい、かっこつけさせてください」

私はそう言って、郁に笑いかけた。

【郁】「男らしいね。たまに、君は本当は男なんじゃないかって思うよ」

【主人公】「ちょっと! でも……私が郁を幸せにするんだもん。 強くならなくちゃ……」

【郁】「いいよ……」

【主人公】「えっ……」

ふいに郁に抱きしめられる。

強く、強く……でも、優しく。

【郁】「君は強くならなくていいよ。 僕が守るから……」

【主人公】「郁……」

【郁】「僕が幸せにするから……。 だから……そのままの君でいて」

そう言って郁は私に優しく口付けた。

【主人公】「人に見られちゃうよ」

【郁】「大丈夫だよ。姉さんしか見てない」

【主人公】「ふふっ、それもそうだね」

【郁】「姉さん、僕が彼女を幸せにするよ。 守っていく」

【主人公】「郁……」

【郁】「でも、僕は素直じゃないからきっと彼女を怒らせる事もあると思う。 そんな時は叱って……」

【郁】「僕が大事なものを見失わないように見守ってて……」

【郁】「それで……それで……」

郁がゆっくりと声を震わせながら言葉を紡ぐ。

今は何も言ってはいけない気がした。

何より、私が郁の言葉を聞いていたい。

【郁】「いつか僕に終わりが来て、姉さんの元にいく時が来たら、今度はまた一緒に生まれてこよう 」

【郁】「そして、僕はまた彼女に出会うんだ。 それで恋に落ちる……」

【郁】「そしたら姉さんに紹介するよ。 きっと姉さんも彼女のことを気に入ると思う」

【郁】「ううん……きっとじゃないな。 絶対だ……。 絶対、姉さんは彼女を気に入る」

いつの間にか私の瞳から涙が零れ落ちてくる。

郁は切なく笑って、その涙を拭ってくれた。

テキストを消す