そんな彼らに苦笑しながら視線を外すと、中庭に面する廊下に陽日先生が見えた。
その目は確かに私達のいる中庭へ向けられているはずなのに、どこかぼんやりとしている。
いつものように、声を掛けようと……
口を開きかけたけど一瞬の迷いが出て、言葉を飲み込んでしまう。
すると、ようやく陽日先生と目が合った。
【直獅】「っ!」
表情が変わった事に気付く。
私は今度こそ大きく息を吸って……
【主人公】「陽日先生!」
声を掛けて、笑顔で大きく手を振る。
【謙介】「あ、ホントだ、直獅じゃん。 あんなところで何してんだ?」
【拓矢】「おーい、直ちゃ~ん!」
【守生】「直獅センセ、何やってんですかー!?」
【直獅】「な、何でもないぞ! たそがれてたんだよ」
【眞古都】「うわ! 似合わない!」
【直獅】「似合わないって何だよ~。 オレだって物思いに耽ることもある! 失礼なヤツらだな」
【修吾】「でも、丁度良かった。 陽日先生を呼ぼうと思ってたところだったんです」
【直獅】「おっ、何だ? 勉強の事で何か質問か!?」
【眞古都】「この落ち葉集めたら、焼き芋するんだ。 だから、直ちゃんセンセも一緒にやろう!」
【直獅】「焼き芋!? それはダメだ! 校内は火気厳禁!」
【主人公】「やっぱり……」
【直獅】「どうしても焼き芋が食べたいなら、食堂のおばちゃんにでも頼め」
【拓矢】「えー! 焼き芋くらいいいじゃん」
【守生】「直獅センセのケチー!」
【直獅】「良ーくーなーいー! ケチって言うな、ケチって!」
【謙介】「はははっ! 直獅が怒ったー!」
【眞古都】「直ちゃんセンセが怒っても、全然怖くないけどな」
【直獅】「怖くないってなんだ! オレだってな、先生なんだぞ」
【守生】「オレより身長低いけどな」
【直獅】「身長の事は言うなぁー!」
【修吾】「そういうところが、先生っぽくないって言ってるのに……」
【主人公】「もう、みんなあんまりからかっちゃダメだよ」
5人を相手に、陽日先生は大声を張り上げている。
その姿がおかしくて、思わず笑い声を立ててしまう。
そんな私をどう見ているのか、陽日先生は少し寂しそうな、申し訳なさそうな顔をしていた。