【翼】「疲れてるとか、助けて欲しいとか、困ってるとか、辛いとか……君はいつも隠すよね」

【主人公】「翼君……? 私は、何も隠してないよ」

【翼】「でも……っ! 俺以外のヤツには、本音を話した事があるんだろ?」

【主人公】「私の、本音を……?」

一体、何の話だろう?

翼君の言葉にあてはまる事を、私の記憶の中から探し出した末に――……

ひとつだけ、思い当たる節があった。

少し前……一度だけ、生徒会室で、律君に弱音をこぼしてしまった事がある。

あの時、律君は私の話を聞いてくれた。

私の弱音を全て聞き入れて、それでも嫌な顔をせず、むしろもっと弱音を話すべきだと言ってくれた。

1人で抱えていないで、翼君を頼れ……と。

でも、翼君はどうしてその事を知ってるんだろう?

あの場には、私と律君しかいなかったはずなのに……。

……と、そこまで考えて、1人、私達以外にあの場所にいた人物のことを思い出した。

ソファで寝てた四季君……もしかして、四季君が実は起きていた……とか?

【主人公】「翼君……もしかして、律君が私の愚痴を聞いてくれた時のことを言ってるの……?」

【翼】「……律? 君の弱音を聞いたヤツって、律なのか?」

【主人公】「翼君……?」

翼君の反応が、何だか私と噛みあわない。

私が戸惑っていると、翼君はひとつ息を吐いた。

【翼】「俺……俺はいつでも、君に一番に頼りにされたいんだ。それなのに君は……どうして俺には、本当の気持ちを話してくれないんだ?」

翼君は、何を言ってるの?

私の一番は、いつだって翼君だよ。

今すぐ、それを伝えたい。

【主人公】「翼君、私は……っ!」

口を開いた瞬間、身体が前のめりになり、倒れかけてしまう。

そんな私を、翼君がすぐに抱きとめてくれた。

【主人公】「ご、ごめん……」

最近、こんな風にめまいを起こす事がしばしばあった。

それは疲れだったり、ご飯をちゃんと食べていないせいだって分かってたけど、違うって、思い込むようにしていた。

【主人公】「あのね、翼君……」

【翼】「ごめんな……自分でも子どもっぽいって分かってるんだ」

【翼】「……彼氏の俺がこんな風に頼りないんじゃ、本音なんて話せないよな」

【主人公】「違う……違うよ、翼君。そういうわけじゃなくて……」

翼君は私の言葉を遮るように、私の身体を抱きしめた。

いつもの、無邪気な抱き締め方じゃなくて……

まるで壊れものを扱うみたいに、そっと弱い力で抱き締められる。

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