未公開イベント NaL -信頼シナリオ-
『黒芸大の日常』
――黒曜芸術大学・講義室にて……。
【講師】
「これでルネサンス時代の概要説明は終わりだ。何か質問のある者は?」
【学生たち】
「……」
【講師】
「では、バロックを見ていく。ここまでが次のレポートの範囲だからよく覚えておくこと」
【天城成海】
(……ここは出そう、と……)
【講師】
「ひとえにバロックと言っても前期、中期、後期に分かれる。18世紀頃に衰退していった――」
【天城成海】
(衰退……?)
【天城成海】
「……すみません、質問いいですか?」
【講師】
「天城君、どうぞ」
【天城成海】
「衰退して……って、現代でも日常で耳にする機会はありますよね?」
【講師】
「その通り。現代音楽と融合したりアレンジされたりなど、意外と身近で聞いたりするものもある」
【講師】
「何故衰退した物が再興していったかは、時間があればそれも後ほど説明出来ればと思ってる」
【天城成海】
「分かりました。ありがとうございます!」
***
【天城成海】
(えーっと……ここは後で忍に聞いてみよう)
【天城成海】
(ん?背中に何かあたってる……なんだろう?)
【香椎玲音】
「……よぉ」
【天城成海】
「……な、なんで玲音がここにいるんだよ……!」
【香椎玲音】
「なんでって、オレもこの授業を履修してるからだろ」
【天城成海】
「だからって、俺の真後ろに座らなくてもいいだろ」
【香椎玲音】
「別にどこに座ろうがオレの勝手だし?」
【天城成海】
「分かったからもう喋りかけないで。こっちは真剣に授業聞いてるんだからさ」
【香椎玲音】
「へーへー。わかったよ」
***
【天城成海】
「………玲音、やめてって言ってるよね?」
【香椎玲音】
「なあ、ノート見せてくれよ。オレも真剣に書いてたんだけど、書き切る前に消されちまったんだ」
【天城成海】
「俺だって今書いてるから無理!」
【香椎玲音】
「ちょっとだけー!な?オレと成海の仲だろ?」
【天城成海】
「そんな仲になった覚え、ないんだけど」
【香椎玲音】
「そんなこと言うなよー。ノート見せてくれよ。なーるーみー」
【天城成海】
「だから、むーりー」
【香椎玲音】
「成海のケチ」
【天城成海】
「へぇ~、人の悪口言って借りられると思ってるの?……せっかく後で貸してあげようかなーって思ってたのにさ」
【香椎玲音】
「申し訳ございません、成海様!」
【天城成海】
「バカにしてない?それ」
【香椎玲音】
「してないしてない。めっそうもございません」
【講師】
「――ではこれから課題曲を流すので、少し待っていてくれ」
【香椎玲音】
「な、今ならいいだろ。よっと!」
【天城成海】
「あ!玲音……!まだいいよ、なんて言ってないのに。もう、仕方ないなあ……」
【香椎玲音】
「ふむふむ、なるほどね~。成海のノートはわかりやすいなー」
【天城成海】
「すごいわざとらしいんだけど。先生の説明の内容ちゃんと覚えてるなら、別に俺のノート見る必要なくない?」
【香椎玲音】
「うろ覚えで書いてたんじゃ後で困るだろ」
【天城成海】
「そんなドヤ顔で言わないでよ。なら最初から書いておけば済む話でしょ」
【香椎玲音】
「だーかーらー、書く前に黒板消されちまったんだって。あと数行だけだから待てよ」
【天城成海】
「もー……ん?玲音、ノートの端に描いてあるのなに?あ!次のページにも描いてある……」
【天城成海】
「犬、じゃないか……猫?がスタンドマイクを持って歌ってる……しかも……『OH! YHAH! YHAH!』って……ふふ、何それ」
【香椎玲音】
「ちょっ、勝手に見るなよ……!」
【天城成海】
「勝手に人のノート奪ったんだから、これくらいいいだろ」
【講師】
「えー準備ができました。これから流す曲は――」
【天城成海】
「あ、始まった。玲音、もうノート返して」
【香椎玲音】
「オレはまだ書いてるんだぞ」
【天城成海】
「何で偉そうなの。ほら、また先生が黒板に書き始めたじゃん!早くノート返してよ――」
【講師】
「おい、そこのふたり!」
【成海・玲音】
「!!」
【天城成海】
「は、はい」
【香椎玲音】
「……はい」
【講師】
「必要のない私語は慎みなさい」
【天城成海】
「すみませんでした」
【香椎玲音】
「すみません……」
【講師】
「君達はプロとして活躍しているかもしれないが、学生である以上、贔屓するつもりはない。いいな?」
【成海・玲音】
「はい……」
***
【天城成海】
「もう!玲音のせいで俺まで怒られたちゃったじゃん」
【香椎玲音】
「悪かったって。けど、あの先生黒板消すの早いよな~」
【天城成海】
「ノートにあんなイラスト描いてるから板書が間に合わなくなるんだろ」
【香椎玲音】
「べ、別にそれは関係ねぇし」
【天城成海】
「もー。次は絶対貸さないからね!」
【香椎玲音】
「ちぇー……それにしてもさ、お説教すげー長くなかったか?」
【天城成海】
「……長かったけど、これから曲を流して聴くっていうのに喋ってた俺達が悪いよ」
【香椎玲音】
「そーだけどさー。それにしても長かったっつーか。だったらノートに写す時間も長くして欲しいよな~」
【天城成海】
「もー。凝りてないでしょ?やっぱり玲音が一緒だとろくなことがない」
【香椎玲音】
「楽しいだろ?」
【天城成海】
「楽しくない!今までの話聞いてた!?」
【香椎玲音】
「そんな怒んなってー」
【天城成海】
「はあ……玲音といると疲れる。誰か……あ、つむぎだ!」
【香椎玲音】
「おー。ほんとだ……って、おい成海!オレのこと置いてくな!」
【天城成海】
「つむぎー!玲音のこと、どうにかしてよー!」
【百瀬つむぎ】
「成海?と、玲音も……あー、これ面倒なことに巻き込まれるパターンか……」
【百瀬つむぎ】
「成海も大変そうだな。でも、学校でまで玲音の相手したくないから。頑張れ」
【天城成海】
「ちょ、ちょっと待ってつむぎ!助けてよー!1人だけ逃げようとするなんてずるい!」
【百瀬つむぎ】
「俺だって学校終わったら嫌でもバカ玲音の相手しなくちゃなんねーし」
【百瀬つむぎ】
「それに俺、次の教室に移動中。あんたらは空き時間だろ?じゃあな」
【香椎玲音】
「おう!そっちも授業頑張れよ~」
【天城成海】
「つむぎー。うう、薄情者~!」
【香椎玲音】
「幼馴染なんだから諦めろよ。さ、昼飯食いにいこーぜー!カフェテリアでいいよな!」
【天城成海】
「うぅ~~助けて亜貴にぃいい~~!!」
END