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『黒芸大の非日常』

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――黒曜芸術大学・正門前。夕星に送ってもらった成海と玲音。

 

【音石夕星】
「はーい、とーちゃーく」

 

【香椎玲音】
「送ってくれてありがとな、ゆーせー」

 

【天城成海】
「ありがとう、夕星。行ってくるね！」

 

【香椎玲音】
「今日は授業中、何回成海の腹が鳴るかなー？」

 

【天城成海】
「好きで鳴らしてる訳じゃないし！生理現象なんだからしょうがないだろ」

 

【音石夕星】
（飽きないね～２人とも。車を降りてもじゃれあって……）

 

【香椎玲音】
「でも成海、食べるわりに――」

 

【音石夕星】
「２人とも、ここで痴話喧嘩してると邪魔だよ～？授業遅れるから、早く行きな」

 

【天城成海】
「痴話喧嘩じゃないから！」

 

【音石夕星】
「はいはい。帰りだけど、夕方から仕事だし、また迎えに来るねぇ～」

 

【天城成海】
「ありがと、夕星」

 

【天城成海】
「あ、でも夕星はインクル・ナイトメアパーティーの準備をしてるんでしょ？そっちは大丈夫なの？」

 

【香椎玲音】
「そーいや、亜貴も色々準備頑張ってたな」

 

【音石夕星】
「大丈夫大丈夫～」

 

【天城成海】
「本当に大丈夫なの？全部亜貴にぃ任せにしたりしてない？」

 

【音石夕星】
「なるなるひっど～い。ちゃーんとやってるよぉ」

 

【香椎玲音】
「亜貴が『夕星さんが色々手伝ってくれてるし、僕も頑張らなきゃ』って言ってたぜ？」

 

【音石夕星】
「そうそう。昨日すっごく頑張ったから、今日の午前中はお休みってわけ」

 

【天城成海】
「そう？そういうことならいいんだけど……」

 

【音石夕星】
「それより成海、本当に遅刻するよ？いいの？」

 

【天城成海】
「あ！急がないと！じゃあ夕星、また後でね！」

 

【音石夕星】
「バイバ～イ」

 

【天城成海】
「も～！遅刻したら玲音のせいだからね！」

 

【香椎玲音】
「あ？何でだよ！」

 

【音石夕星】
「あの２人まーだやってる。今日も平和だねぇ」

 

【音石夕星】
「さて……夕方まで今日は暇だし……何しようかな？」

 

【音石夕星】
「あー、お腹すいたぁ……」

 

【音石夕星】
（今朝は寝坊したから、はるはるのご飯食べられなかったんだよね）

 

【音石夕星】
（……そういえば、さっき成海と玲音が……）

 

＋＋＋

 

【天城成海】
「あ！そういえば今日からじゃない？」

 

【香椎玲音】
「げ、なんかテストあったっけ？」

 

【天城成海】
「違うよ、学食。今日から秋メニューが出るんだよ！」

 

【香椎玲音】
「あーそうだ！限定メニューも出るんだよな」

 

【天城成海】
「まだ写真でしか見てないけど、どの定食も美味しそうだったな～」

 

【香椎玲音】
「そんなのいちいちチェックしてんのかよ？」

 

【天城成海】
「大学のお知らせに載ってたんだよ」

 

【香椎玲音】
「そうだっけ？てか写真までそんな詳しく見ないしな」

 

【天城成海】
「うちの学食ってどれも美味しいから楽しみなんだ～♪」

 

【香椎玲音】
「コンビニの弁当よりはるかにうまいし、量も多いしなー」

 

【天城成海】
「そう！いっつも何を頼もうか悩むんだよねー。１回に３食くらいは食べたいな」

 

【香椎玲音】
「それは食い過ぎだろ……」

 

【音石夕星】
「なるなる、朝あれだけ食べたのにもう昼の話なの～？」

 

【香椎玲音】
「ほら、ゆーせーだって『大食らい』ってよ」

 

【天城成海】
「そんな風に言ってないだろ。それに、俺は育ち盛りなだけだから！」

 

＋＋＋

 

【音石夕星】
（大学の学食ねぇ……そーいえば、まともに行ったことなかったな）

 

【音石夕星】
（っていうか、授業だって別に行かなくてもテストさえ合格すればよかったし、さっさと卒業しちゃったしねぇ……）

 

【音石夕星】
（日本とアメリカじゃ全然違うよね。成海達みたいな日本の大学生活かぁ～）

 

【音石夕星】
「……I got it♥」

 

＊＊＊

 

――黒曜芸術大学・構内にて。

 

【音石夕星】
「へー成海達ってここで勉強してるんだぁ～」

 

【音石夕星】
（女の子もみんな可愛くていいよね～。キラキラしてて、青春ってやつ？）

 

【音石夕星】
（でもやっぱアメリカの大学とは雰囲気違うね）

 

【音石夕星】
「さーて、学食はどこかな……ん？」

 

【音石夕星】
「あー、なるなるみっけ♥」

 

※※※

 

【講師】
「これでルネサンス時代の概要説明は終わりだ。何か質問のある者は？」

 

【学生たち】
「……」

 

【講師】
「では、バロックを見ていく。ここまでが次のレポートの範囲だからよく覚えておくこと」

 

【講師】
「ひとえにバロックと言っても前期、中期、後期に分かれる。18世紀頃に衰退していった――」

 

【天城成海】
「……すみません、質問いいですか？」

 

【講師】
「天城君、どうぞ」

 

※※※

 

【音石夕星】
（へー、クラシックの歴史ね。共通だもんね、そこらへんは。歌手だろうが演奏者だろうが）

 

【音石夕星】
（成海、真面目に勉強してるじゃん。なんか新鮮かも）

 

【音石夕星】
（今まで学校での顔なんて見たことなかったな……ずっと一緒にいるのに）

 

【音石夕星】
（こんな授業、僕だったら退屈で死んじゃう。みんなよく座って大人しくしてられるよね～）

 

【音石夕星】
「あ、学食食べに来たんだった。ってあれ？」

 

【音石夕星】
「なるなるの後ろにいるの、れおじゃん」

 

※※※

 

【天城成海】
「……な、なんで玲音がここにいるんだよ……！」

 

【香椎玲音】
「なんでって、オレもこの授業を履修してるからだろ」

 

【天城成海】
「だからって、俺の真後ろに座らなくてもいいだろ」

 

【香椎玲音】
「別にどこに座ろうがオレの勝手だし？」

 

※※※

 

【音石夕星】
「れおがペンでつんつんして、なるなるにちょっかいかけてる……あはは、成海、すーごっい嫌そうな顔してる～」

 

【音石夕星】
「ほーんと仲良し～。あーあー、注意されてるじゃん」

 

【音石夕星】
「あはは。面白いなぁ、２人とも。おべんきょう頑張って♥」

 

＊＊＊

 

――黒曜芸術大学・カフェテラス。

 

【音石夕星】
「やーっと食べられる～♪いっただきまーす」

 

【音石夕星】
「ん～、おいし～♥」

 

【音石夕星】
（メニューもたくさんあるし、日本の大学ってこんなに豪勢なんだぁ～。一般開放されててラッキー♪）

 

【音石夕星】
（成海を送ってきたついでにまた食べに来ちゃおっかな～）

 

＊＊＊

 

【音石夕星】
「ふー、美味しかった。ごちそうさまでしたぁ～」

 

【音石夕星】
「ん～……ここ、居心地いいし……少し作業していこうかな」

 

【音石夕星】
（ハロウィンイベントでの仮装のデザインは……）

 

【音石夕星】
「どんなの着てもらおうかな～。なんか楽しくなってきたかも♥」

 

＊＊＊

 

【天城成海】
「あ、あれ？……夕星！どうしてここにいるの？」

 

【音石夕星】
「あ～なるなるだぁ。もしかして授業サボった？」

 

【天城成海】
「サボってないよ！今空き時間だからご飯食べに来たんだ」

 

【香椎玲音】
「ゆーせー、どうしたんだ？まさかオレ達と別れた後に入ってきたのか？」

 

【音石夕星】
「そーだよぉ～。今朝なるなる達の話聞いて、僕も学食食べてみたいなーって思ったんだ～。朝、食べ損ねちゃってたし」

 

【音石夕星】
「っていうか、２人は授業中も仲がいいんだねぇ」

 

【天城成海】
「え！見てたの！？恥ずかしい……！」

 

【香椎玲音】
「呼んでくれれば案内したのによー。水くせーぞー？」

 

【天城成海】
「玲音は授業があっただろ」

 

【香椎玲音】
「それはそれってことで？それにしても、大学にいるゆーせーの姿って結構新鮮だよな」

 

【天城成海】
「確かに、夕星とは一緒にいることが多いけど、大学で会うのって不思議な感じがするね」

 

【天城成海】
「もし夕星が黒芸大に通ってたら、こんな風に授業の合間に会えたりしたのかな～」

 

【音石夕星】
「かもね～。なるなるやれおやつむ達がいるなら、ちょっと楽しそう♥」

 

【天城成海】
「そうだ！せっかくだし、同じ席でお昼食べてもいい？もうすぐ友達も来るから、騒がしくなっちゃうけど……」

 

【音石夕星】
「いいよ。買ってきな。デザイン考えながら待っててあげる」

 

【天城成海】
「やったー！……あ！あとね、俺、せっかくなら夕星に見せたい場所があるんだ！」

 

【音石夕星】
「見せたい場所？」

 

【天城成海】
「大学の図書館だよ。うちの大学古いから、昔の洋書や資料がたくさんあって……夕星の家にも本がいっぱいあったし、興味あるかなって思ってたんだ」

 

【天城成海】
「読みたい本があれば俺が借りることもできるよ！どうかな？」

 

【音石夕星】
「ふ～ん……ちょっと見てみたいかも」

 

【天城成海】
「本当！？よかった～」

 

【香椎玲音】
「おっし。じゃあ昼飯買ってこようぜ！」

 

【天城成海】
「うん！」

 

【音石夕星】
「いってらっしゃーい」

 

【音石夕星】
「まあ……こんな日もたまには良いかもね」

 

 

END