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YORITO Birthday Story 後編

 


『かけがえのないメンバー 後編』


 

――病院へ行った日の夕方。

 

【時明】
「じゃあ、メンバー全員揃ったことだし、そろそろ打ち合わせ始めようか」

 

【優】
「その前に、聞きたいことがある……依都」

 

【依都】
「え~なになに?オレまだ何もやってないよ~」

 

【優】
「……昨日のラジオ収録の時、いつもより声量を控えていただろ。喉の調子でも悪いのか?」

 

【依都】
「なーんだ、優にもバレてたんだ」

 

【時明】
「その件だけど、今朝、依都を病院に連れて行ったんだ」

 

【優】
「……っ!」

 

【篠宗】
「病院に行くほど大変な状態だったのか!?」

 

【依都】
「いや~まあその……ねぇ……」

 

【時明】
「ふふっ」

 

【篠宗】
「ん?どうして時明は笑っているんだ?」

 

【時明】
「だって……ねぇ?」

 

【依都】
「いや~、ははは」

 

【優】
「おい、どっちでもいいから説明しろ」

 

【篠宗】
「依都の調子が悪いのなら、ライブや収録の予定を変えなければいけないだろう」

 

【時明】
「その心配はしなくていいよ、篠さん。だって、依都の喉は……」

 

【時明】
「酒焼けが原因だからね」

 

【優】
「は?」

 

【篠宗】
「酒焼け……というと、あれか?酒の飲み過ぎで起こる?」

 

【時明】
「そうなんだよ。レントゲンまで撮ったらしいんだけど……本当、心配して損しちゃった」

 

【依都】
「オレだって、無駄に不安になって損したよ」

 

【篠宗】
「依都、酒の飲み過ぎは気をつけろとあれほど注意したのに、どんな飲み方をしたんだ?」

 

【依都】
「いや、実はさ~……」

 

***

 

――今から2日前の深夜。

 

【依都】
「ははははっ!これ、サイコーだね!」

 

【芹】
「あーやっぱりショットはきっついな。次は負けませんからね!」

 

【プロデューサー】
「ダーツで負けたほうがショット飲み、なんて……ふたりとも、意外と子どもみたいな遊びするんだね」

 

【依都】
「何言ってんの。男はいくつになっても子どもなんだよ。ってわけだから、次行くよ~~」

 

【プロデューサー」
「次も僕が勝ちますよ~」

 

【芹】
「いやいや、次は俺ですから!」

 

***

 

【プロデューサー】
「はい、僕の勝ちですね。おふたりとも、どーぞ」

 

【依都】
「ん……!ゴクゴク……!っはあ!」

 

【芹】
「あ~喉があっつい……」

 

【依都】
「まって、これ何杯目?こんなに飲んだの久しぶりかも」

 

【芹】
「俺もですよ~。あ~なんかグラグラしてきたかも……」

 

【宗太郎】
「せっちゃん!ここにいたのね」

 

【芹】
「ぅえ?ハル、なんでここに……」

 

【宗太郎】
「んもう、思った通りだわ。何度も連絡したのよ?明日は朝早く仕事があるから、飲むのもいいけど、深夜回る前には帰ってねって言ったでしょ」

 

【宗太郎】
「それなのに、こんな時間まで飲んで……明日ちーちゃんに怒られても知らないわよ」

 

【芹】
「あーそれは困る」

 

【宗太郎】
「だったらほら!帰るわよ!」

 

【芹】
「って、ハル待って!引っ張るなって~!」

 

【依都】
「あらら、帰っちゃったね。じゃあ仕方ない、ここでお開きにしよっか」

 

***

 

――時間は戻って、事務所会議室にて。

 

【依都】
「というわけで、ただの酒焼けでした~~!!」

 

【優】
「……」

 

【依都】
「しかも、酒焼けだったのは昨日だけで、今日はもう違和感なし!絶好調ってわけ」

 

【優】
「……お前」

 

【依都】
「って、優ストップ!そうやってすぐイス振り回そうとしないでよ!」

 

【依都】
「悪かったよ!さすがに今回はオレも反省してるからさっ」

 

【優】
「どれだけ俺達が……!」

 

【依都】
「『心配した』んだろ?だからほんとごめんって!」

 

【優】
「心配なんかするか!!!」

 

【篠宗】
「優、その辺りで許してやれ。依都も後輩と飲んでいて、ついはしゃいでしまっただけだろう?」

 

【依都】
「そうなんだよ~さすが篠、わかってる~」

 

【篠宗】
「だが、もう無茶出来る年じゃないんだ。ほどほどにしろよ?」

 

【優】
「篠宗の言う通りだ。自分の年を考えろ」

 

【依都】
「え~優と2つしか変わらないじゃん」

 

【時明】
「でも、ただの酒焼けで良かったよね。これで安心して、KYOHSOのヴォーカルとして続けられる」

 

【依都】
「当然でしょ。このオレが、そう簡単にこの場所を手放すわけないじゃん」

 

【依都】
「時明、優、篠……心配かけてごめん」

 

【優】
「……そう何度も謝るな。気持ち悪い」

 

【依都】
「ひどっ」

 

【篠宗】
「大事に至らなくて何よりだ。これで今度の依都の誕生日パーティも心置きなく楽しめるな!」

 

【時明】
「ふふっ、そうだね」

 

***

 

――そして、依都の誕生日当日。

 

【芹】
「じゃ、みなさん。グラス持ってくださいね。いきますよ――」

 

【芹】
「依都さん、お誕生日おめでとうございます!カンパーイ!」

 

【依都】
「ありがとね、みんな」

 

【玲音】
「よりさん!誕生日おめでとうございます!この世によりさんが生まれてきてくれて、オレすっげー嬉しいです!」

 

【依都】
「お~、玲音は相変わらず熱烈だねぇ」

 

【つむぎ】
「バカ玲音!一人で先に行くなって!」

 

【依都】
「おっ、つむぎ。少しは酒強くなった~?」

 

【つむぎ】
「あ……まだ、です。っそんなことより!」

 

【つむぎ】
「よりさんおめでとうございます。俺もよりさんみたいなパーフェクトな男になれるように頑張るんで見ててください」

 

【依都】
「オレはなかなかハードル高いよ~?」

 

【つむぎ】
「知ってます。それによりさんはもういるし、俺は俺の思うパーフェクトを目指します」

 

【依都】
「了解。しっかり見ててやるよ」

 

【玲音】
「くぅ~~~!よりさんますますかっこいい男に……!ほらっ、久遠と亜貴も今のうちに伝えろよ!」

 

【依都】
「ははは!だーいじょうぶ。オレは逃げないよ」

 

【久遠】
「依都先輩、おめでとうございます!これからもお子様ズがお世話になるかと思いますが、引き続きよろしくお願いします!」

 

【亜貴】
「おめでとうございます、城坂先輩。城坂先輩にとって、幸せな年であることを祈っています!」

 

【依都】
「ふたりともありがとね。レヴァフェもパーティー楽しんでってよ」

 

【玲音・久遠・つむぎ・亜貴】
「はい!!!!」

 

【依都】
(事務所に入ったころは、会う度ガチガチに緊張してたあいつらも大人の顔になったじゃん)

 

【依都】
(キングを中心に、あいつらが魅せる音楽という盤上のゲームがこれからも楽しみだね)

 

【芹】
「よ・り・とさ~ん!」

 

【依都】
「ん?芹……とLiar-S御一行じゃん」

 

【宗太郎】
「まあ!より先輩に『Liar-S御一行』と呼んでもらえるなんて光栄です!」

 

【依都】
「これでも後輩のことは結構見てるんだよ~。……って、朔良はまーた肉食ってんの?」

 

【朔良】
「うまいっすここの飯」

 

【芹】
「当然だっつーの!ほら、さっさと肉飲み込めって。依都さんにお祝いを伝えに来たんだろ?」

 

【朔良】
「ん」

 

【朔良】
「……よりさん、おめでとうございます。よりさんのエロかっこいい歌、もっと聴きたいっす」

 

【依都】
「任せてよ。ますますパワーアップしちゃうから期待してろよ」

 

【千哉】
「城坂さん、お誕生日おめでとうございます。城坂さんの歌声を、ひとりのKYOHSOファンとしてこれからも楽しみにしています」

 

【宗太郎】
「より先輩♪年を重ねるごとにどんどんいい男になっていく姿に私もメロメロになっちゃいそうです。幸せな年にしてくださいね」

 

【芹】
「最後は俺だな!依都さん!おめでとうございまーーす!!これからもたくさん可愛がってください♥」

 

【依都】
「サンキュー。お礼に今度Liar-S全員飲みに連れてってあげるよ。いつも芹とばっかじゃ飽きちゃうしね~」

 

【芹】
「そんな!酷い!」

 

【依都】
「ははは!冗談だって。芹と飲む酒は格別だから好きよ、オレ」

 

【芹】
「依都さん~~」

 

【宗太郎】
「よかったわねぇ、せっちゃん」

 

【千哉】
「まったく、城坂さんに甘えすぎだよ……あれ?朔良は?」

 

【依都】
「朔良なら、いま来た料理の皿に吸い寄せられてったよ~」

 

【宗太郎】
「まあ!さくらちゃんったら!」

 

【芹】
「こら朔良~~!」

 

【千哉】
「すみません城坂さん、また後程……!」

 

【依都】
「はいはい。またな~」

 

【依都】
(メンバー間の関係が心配だって聞いてた時もあったけど、あいつらは、もう大丈夫だね)

 

【依都】
(Liar-Sには、俺達KYOHSOの後を追うだけじゃなくてしっかり自分達の航路を進んでもらわないと)

 

【有紀】
「城坂さん、俺達apple-polisherとも乾杯してもらえますか?」

 

【依都】
「お、来たね有紀~!もちろん大歓迎だよ~」

 

【有紀】
「誕生日おめでとうございます。また近いうちに、とびきり美味いビール飲みに行きましょう」

 

【成海】
「城坂さん、お誕生日おめでとうございます!あの!今度、俺も飲みに連れてってください。お願いします!」

 

【依都】
「そういえば成海と飲んだことってなかったよね?有紀、成海って強いの」

 

【有紀】
「俺達4人の中では一番ですよ。だからこそジュースみたいに酒を飲むから目が離せないんです……」

 

【夕星】
「なるなる突然寝ちゃってよくテーブルに頭ぶつけてるもんねぇ~」

 

【成海】
「う……!ばらさないでよ~!」

 

【依都】
「ははは!それなら上手な酒の飲み方を教えないとね。もちろん、忍の手料理付きでしょ?」

 

【有紀】
「味は腐れ縁の俺が保証しますよ」

 

【忍】
「おい有紀、なぜお前が……まあいい。城坂さんに満足してもらえるよう、最善を尽くします」

 

【忍】
「誕生日おめでとうございます。城坂さんにとって実り多き一年になりますように」

 

【依都】
「ありがとね。手料理楽しみにしてるよ」

 

【依都】
「……で、夕星からはなーんもないわけ~?」

 

【夕星】
「ぅわ!髪の毛ぐしゃぐしゃにするなぁ~!」

 

【依都】
「ははは!夕星の髪って柔らかくていいねぇ~」

 

【夕星】
「ぶー!」

 

【依都】
「……夕星」

 

【夕星】
「ん~?なーに」

 

【依都】
「バンド、楽しいだろ」

 

【夕星】
「……」

 

【依都】
「お前の事見てるとさ、なーんか思い出しちゃうんだよね~」

 

【依都】
「お前がapple-polisherの音にしか興味なかったみたいに、オレにもそんな時期があったな~って」

 

【依都】
「KYOHSOの音に夢中で、それだけに集中していたくてそれ以外は邪魔な音だ!みたいな時期がさ」

 

【夕星】
「……トゲトゲよりより?」

 

【依都】
「そうそう!トゲトゲよりよりだったわけよ!」

 

【依都】
「そんな頃の自分をお前の中に見た気がして、気付いたら……まだ心のどこかに残ってたそのトゲをお前に向けてた」

 

【依都】
「後から時明に言われちゃったよ。『夕星の前だと昔の依都を見られるから懐かしい気分になる』って」

 

【依都】
「言われて初めて気付くなんて、オトナの男として情けないじゃん?」

 

【依都】
「お前はオレに向けたトゲを謝ってくれたのにな」

 

【依都】
「だから……ごめん、夕星」

 

【夕星】
「It doesn’t bother me.(気にしてない)」

 

【夕星】
「でも、よりよりはひとつ間違ってるよ~?」

 

【依都】
「ん?」

 

【夕星】
「よりよりがKYOHSOの音に夢中なのは変わらない。過去も今も、未来もね」

 

【夕星】
「僕もきっと“そう”だから」

 

【依都】
「……ああ。はははっ!夕星にはわかっちゃうんだね~」

 

【夕星】
「Happybirthday♥僕にも今度、ワルイ大人の上手なお酒の飲み方ってやつ教えてね♥」

 

【依都】
「任せてよ」

 

【依都】
(危なっかしかったapple-polisherも今ではこうやって事務所を支える一員になってる)

 

【依都】
(重ねてきた時間だけが全てじゃない。けどそこから見えてくるものも確かにある……)

 

【依都】
(オレにとっての、KYOHSOのように――)

 

【篠宗】
「やっと主役の身体が空いたようだな!」

 

【依都】
「ん?うちのメンバー勢揃いでどうしたの~?」

 

【時明】
「もちろん、依都にお祝いの言葉を伝えるために待っていたんだよ」

 

【時明】
「優は待ちくたびれちゃったみたいだけどね?」

 

【優】
「別に待ってなんかいない」

 

【篠宗】
「そうか?常に依都がどこにいるのか把握していたから、早く話したいんだと思っていたが……」

 

【優】
「篠宗!」

 

【時明】
「照れることないと思うよ。今日は特別な日だからね」

 

【依都】
「そうそう。熱い気持ち受付中だよ~」

 

【優】
「……」

 

【篠宗】
「ははは!それじゃあ、まずは俺からいこう」

 

【篠宗】
「依都、誕生日おめでとう!こうして今年も祝うことが出来て嬉しいぞ!」

 

【時明】
「誕生日おめでとう、依都。依都自身も、その周りの人達も幸せでありますように……なんてね」

 

【優】
「……おめでとう。けど、今度は飲み過ぎに注意しろ。KYOHSOのヴォーカルは、お前だけなんだ」

 

【依都】
「……みんな、ありがとね。すっげー嬉しいよ」

 

【依都】
(あ……やば)

 

【時明】
「依都?」

 

【依都】
「なんでもないよ~。ワイン飲んで熱くなっちゃったし、少し涼んでこようかな~」

 

【時明】
「そう、いってらっしゃい」

 

【優】
「あいつ、いきなりどうしたんだ?」

 

【篠宗】
「照れ屋なのは、優だけじゃないということだな」

 

【時明】
「そういうことだね」

 

***

 

――レストランのバルコニーにて。

 

【依都】
(はー……さっきは自分でも驚いた。まさかメンバーの言葉で泣きそうになるなんて)

 

【依都】
「鋼の涙腺のつもりだったんだけどなー……」

 

【芹】
「あ!いた!お疲れ様です、依都さん」

 

【芹】
「姿が見えないと思ったら、こんなところにいたんですね。どうかしましたか?」

 

【依都】
「いやー、ちょっと涼んでただけだよ」

 

【芹】
「どうですか?このレストラン」

 

【依都】
「料理もうまいし、酒もサイコー。芹に任せて正解だったよ。いろいろありがとね」

 

【芹】
「いつもお世話になってるお礼ですから!」

 

【玲音】
「あー!せりばっかりよりさんと喋っててずりー!」

 

【芹】
「玲音!よくここがわかったな」

 

【玲音】
「オレのよりさんセンサーが反応したからな!それで、よりさん。いま少しいいですか?」

 

【依都】
「いいよ。どうした?」

 

【玲音】
「あ、あの!よりさん!これ……!」

 

【依都】
「ん?何、これ」

 

【玲音】
「オレからの、誕生日プレゼントです!」

 

【依都】
「わざわざ用意してたの?玲音ってホント、オレのこと好きだよね~」

 

【玲音】
「好きに決まってるじゃないですか!これからもずっと……KYOHSOのYORITOさんが、オレの一番の憧れです!」

 

【依都】
「ははっ、ありがとね。嬉しいよ」

 

【依都】
「プレゼント、開けてみていい?」

 

【玲音】
「はい! もちろんです!」

 

【依都】
「どれどれ~っと……お」

 

【依都】
「ショットグラスじゃん」

 

【芹】
「へえ~!綺麗ですね!クリスタルみたいだ」

 

【玲音】
「……でも、あの、さっき、ときさんからよりさんが最近お酒飲み過ぎて大変だったって聞いて……」

 

【依都】
「あはは!いいっていいって、気にしないで」

 

【依都】
「玲音が一生懸命考えて選んでくれたの、伝わった。ありがとね、玲音。大事にするよ」

 

【玲音】
「……はい!!!」

 

***

 

――再びフロアに戻ってきた依都は……。

 

【依都】
「これで、一通りみんなに挨拶は出来たかな」

 

【優】
「それはいいけど、飲みすぎるなよ。またこの前みたいなことになったら……」

 

【依都】
「もうしないって!そんな怒んないでよ」

 

【時明】
「違うよ、依都。優は怒ってるんじゃなくて、依都の喉を心配してるんだよ」

 

【優】
「違う。ヴォーカルとしての自覚を持てって言ってるんだ」

 

【依都】
「またまた~。素直に、オレのことが心配でたまらない、って言っていいんだよ優」

 

【優】
「うるさい、違う」

 

【篠宗】
「まあまあ、それくらいで許してやれ」

 

【優】
「……」

 

【依都】
「あ、拗ねちゃった」

 

【篠宗】
「しかし依都、あの時は俺も心配したぞ。優も不安だったから、話を聞こうとしたんだろう?」

 

【優】
「……一応」

 

【依都】
「え!?」

 

【優】
「KYOHSOのヴォーカルは依都、お前にしか務まらない。それを自覚しろって言ってるんだ」

 

【時明】
「つまり優は、喉を大事にしようって言ってるんじゃないかな?」

 

【優】
「……そういうことだ」

 

【依都】
「マジ……?優が素直なんて、明日、嵐でも起こるんじゃない?」

 

【優】
「おい」

 

【依都】
「ごめん、ごめん。でも、いつもはそんなこと言ってくれないじゃん」

 

【優】
「それはお前がすぐからかうからだ」

 

【依都】
「だって優からかうの面白いんだもーん」

 

【優】
「……」

 

【篠宗】
「優、落ち着け。ほら、あれを渡さないといけないだろう」

 

【優】
「……はあ、そうだな」

 

【依都】
「あれって?」

 

【篠宗】
「気にするな!依都、飲み物のおかわりがいるだろう。取ってきてやるぞ!」

 

【依都】
「じゃあ、ワインにしよっかな。赤ね」

 

【時明】
「俺は、ロゼにしようかな」

 

【篠宗】
「よし、わかった!優、行くぞ」

 

【優】
「ん」

 

【時明】
「依都、喉の調子はどう?」

 

【依都】
「ばっちりに決まってんじゃん。……この間は、ありがとね」

 

【時明】
「リーダーとして当然だよ。何より仲間のため……依都のためだからね」

 

【時明】
「……前に、依都の声が出なくなった時は、俺は何もしてあげられなかったから……」

 

【時明】
「だから今度は後悔したくなかったんだ」

 

【依都】
「それはオレのセリフ」

 

【依都】
「あの時は、ただ歌えなくなるのが怖くて、ひとりで抱え込んで、時明達に頼ろうって考えがなかったんだよね」

 

【依都】
「けど、今は不安なことがあっても平気」

 

【依都】
「なんていうか……うちのメンバーって心強いんだって改めてわかったからさ」

 

【時明】
「そう……わかってもらえて嬉しいよ。無理やりにでも病院に連れて行った甲斐があったかな」

 

【時明】
「さて、せっかくの誕生日パーティーなんだし、重い話はここまでにしようか」

 

【時明】
「渡したいものもあるしね」

 

【依都】
「え~なになに?」

 

【時明】
「喜んでくれるといいんだけど……」

 

【時明】
「改めて、誕生日おめでとう。依都」

 

【依都】
「オレの好きなブランドのショッパーじゃん!」

 

【依都】
「しかもサングラス?うわ、超嬉しい!サンキュー時明。さすがオレの好み分かってるね」

 

【時明】
「ふふっ、喜んでもらえて良かったよ」

 

【???】
「俺達も渡したいものがあるんだ!」

 

【依都】
「篠?」

 

【篠宗】
「待たせたな!人が多くて、戻るのに少し手間取ってしまった」

 

【篠宗】
「依都、誕生日おめでとう!依都にも手軽に使えるものを買ってみた」

 

【依都】
「え?これってミキサー?なんで?」

 

【篠宗】
「これなら手軽にジュースを飲めるんだ」

 

【篠宗】
「それに、バナナとほうれん草、牛乳を入れれば、グリーンスムージーも作れる。忙しい朝にもぴったりだろう」

 

【依都】
「あはは……何年か前の誕生日プレゼントは、ちゃんと飯食えって言って、米と炊飯器だったよね。ホント……篠らしいわ」

 

【依都】
「で?俺達ってことは、優もあるんだよね~?」

 

【優】
「……用意してない」

 

【篠宗】
「何を言っているんだ?一緒に選んだじゃないか」

 

【優】
「……っ!」

 

【優】
「篠宗、余計なこと言わなくていい」

 

【篠宗】
「あ、もしかして買い直したのか?」

 

【優】
「そうじゃなくて……」

 

【依都】
「まったくウチのベーシストは、本当に素直じゃないよね~」

 

【優】
「…………はあ。これ、やる」

 

【依都】
「おっと」

 

【依都】
「ちょっと優、投げて寄越すとか愛がないんじゃない?って、これ……キーケース」

 

【時明】
「あれ?でも優、何年か前にも、同じブランドのキーケースあげてなかった?」

 

【優】
「もうボロボロになってただろ。使わないなら捨てていい」

 

【依都】
「捨てるわけないじゃん。ありがとね、優。前に貰ったキーケースから、これに後で付け替えるよ」

 

【優】
「ああ。……おめでと」

 

【依都】
「……」

 

【篠宗】
「依都?どうした、黙り込んで」

 

【依都】
「みんなにプレゼントもらうのは今年が初めてってわけじゃないんだけどさあ……」

 

【依都】
「何年経ってもすっごい嬉しい!」

 

【時明】
「おっと……!」

 

【優】
「おい、依都……!」

 

【依都】
「も~~~~~~~~!!!お前ら超愛してる!」

 

【篠宗】
「ははは!俺も、依都のことは好きだぞ!」

 

【時明】
「そうだね。俺も愛してるよ、依都」

 

【優】
「別にオレは好きじゃない」

 

【依都】
「はいはい、いつものシャイね~。でもオレは愛してるから!ほんっと、最高のメンバーだよ!」

 

【依都】
(今も昔も、オレの歌声のそばにはこいつらの音がある)

 

【依都】
(そして未来も変わらずに……)

 

【依都】
「よーし!今夜のお礼に一曲歌っちゃおっかな~!芹、そこのピアノ借りるね~」

 

【依都】
(ステージが好きだ。観客に求められる事が好きだ)

 

【依都】
(歌う事がなにより好きだ)

 

【依都】
(こいつらと一緒に生み出すKYOHSOの音楽を愛してる)

 

【依都】
「お前らにだけ贈る、KYOHSOのヴォーカル・YORITOの一夜限りのソロライブ。楽しんでってよ♥」

 

 

 

END