-
【このは】「よ、依都さん!? 一体何を……っ」
【依 都】「……静かにして……」
【このは】「依都さん……」
【依 都】「……せっかくのクリスマスなんだからさこのまま少しじっとしてて」
私の背中を抱いたまま依都さんが囁く。耳元で聞こえる声に身動きもできなくなる。
【依 都】「今日、このはといられたこと……オレ、すごく嬉しいから」
間近に感じる温かい吐息。かすかな息づかいが首筋をかすめて、ビクッと身体が震えた。
私の胸の鼓動が一気に速度を上げていく。
【依 都】「……このははどう?」
掠れた声で名前を呼ばれて、とくんと胸が鳴る。
(どうしよう……このままじゃ……)
今まで知らなかったときめきを感じて頬が一気に熱くなる。痛いくらいに胸が鳴っていた。
【依 都】「そんなに緊張しなくていいのに」
【このは】「だって……」
-
【時 明】「ならさ……」
【このは】「はい」
【時 明】「そう思うなら、このはが教えてよ」
すっと、頬に手が伸ばされた。
【このは】「と、とき……はる……さん?」
顔を持ち上げられ、時明さんの瞳が真っ直ぐに私を射ぬく。
【時 明】「ねえ、教えてよ。俺に」
【時 明】「人を特別に愛するってどういう感じなの?」
【このは】「あ……」
何と言えばいいのか分からない。
目を逸らす事も出来ず、私はただ時明さんを見つめた。
【時 明】「なんて、ね」
そんな私をどう思ったか。にこりと微笑みを浮かべて、彼は手を放した。
【このは】「……からかわないでください」
(時明さんの冗談は心臓に悪いよ……!)
私は胸をおさえて溜息を吐く。
-
テーブルに置いてあった黒のマニキュアを手に取り、フタを開ける。
筆についたカラーの量を調整した後そっと優さんの爪に這わせた。
【 優 】「…………」
(優さん、すごい顔してる……)
【このは】「そんなに嫌でした? 私がやるの」
【 優 】「別に」
【このは】「迷惑だったら、すみません」
【 優 】「迷惑なら追い出す」
【このは】「なら良かったです」
【 優 】「ただ……」
優さんはそこから先の言葉を悩んでいるのか、自分の爪を見つめたまま黙ってしまった。
【 優 】「やっぱり、いい」
【このは】「そうですか? じゃあ、続けますよ」
【 優 】「ああ」
-
【このは】「え……?」
突然の感触に視線を向けると、篠宗さんの大きなジャケットを羽織らされていた。
【篠 宗】「寒いだろう」
【このは】「あ……確かに、寒くなってきましたね」
【篠 宗】「もうすぐ12月だからな。夜は冷え込む」
【このは】「でも、これじゃあ篠宗さんが風邪ひいちゃいますよ」
【篠 宗】「俺は鍛えているから心配ない。ここ数年、風邪もひいていないしな」
【このは】「篠宗さん……」
篠宗さんの優しさに胸がいっぱいになり、言葉が出てこない。
【このは】「……ありがとうございます」
嬉しくて泣きそうになる気持ちを抑え、頭を下げる。
【篠 宗】「電話が繋がらない以上は、もう打つ手がないんだ。大人しくしていよう」
【このは】「そうですね。むやみに体力を使わない方がいいですね……」
エレベーターの隅に2人で並んで座り、ぼんやりと壁を見つめる。
【このは】「篠宗さんって大きいなって思ってましたけど、こうしてジャケット羽織ると、改めて大きさを実感しますね」
【このは】「見てください。ほら、こんなに袖が余ります」
【篠 宗】「ははっ、そうだな」
-
YORITO Encore Scenario
【依 都】「ねぇ、こっちにおいで」
【このは】「は、はい」
導かれるように、依都さんの隣に行くと肩を抱き寄せられた。
【依 都】「……久しぶりに君の傍にいる気がする」
【このは】「そう、ですね……」
そのまま、そっと肩を寄せ合う。
肩に触れる、依都さんのぬくもり。
その喜びに胸がざわめく。
こらえきれずに、私もそっと……依都さんに寄り添った。
【このは】「……」
微かな潮の匂い。波を割る船の進む音と、遠いざわめき。
まるで、世界から私たちのいる場所だけが切り取られたかのような静寂に身を委ねる。
【依 都】「……ね。覚えてる? 1年前のこと」
依都さんは海の向こうを見ていた視線を私に向けて、真剣な声で言った。
真摯な眼差しに……頷く。
【このは】「……忘れるはずありません」
【依 都】「そっか」
【このは】「依都さんとの思い出なんだから、忘れられるはずがありませんよ」
少しだけ緊張で掠れる声。気づいているはずだけど、依都さんは何も言わなかった。
-
TOKIHARU Encore Scenario
【時 明】「ねぇ……」
【このは】「んっ……」
【時 明】「起きないと、キスをするけど……いい?」
【このは】「き、す……?」
【時 明】「そう、キス。こんな感じで……」
【時 明】「んっ、ちゅっ」
唇に触れる感触に、意識が覚醒していく。
【このは】「んっ……」
【このは】「ときはるさん……?」
【時 明】「眠り姫がやっと目を覚ましたみたいだね」
【このは】「えっ……」
ゆるゆると考えているうちに、いつの間にか眠ってしまったようで、時明さんの艶のある声と、食欲をくすぐる香りに目が覚めた。
【このは】「私、もしかして寝ちゃってました?」
【時 明】「そうだね。可愛い寝顔をしていたから、このまま寝かせてあげたかったんだけどね」
【時 明】「今日はお昼を食べていないみたいだったから、食事をしてほしくて起こしちゃったよ。ごめんね」
【このは】「そ、そんな、時明さんが謝る事じゃないです! 起こしてくれてありがとうございます」
【時 明】「どういたしまして、って言うのは……何か違う気がするね」
【このは】「ふふっ、そうですね」
【時 明】「さあ、食事にしようか」
【このは】「はい!」
-
YUU Encore Scenario
【このは】「お邪魔します」
リビングに入ると、優さんはビビの頭を撫でていた。
ビビは気持ちいいのか、目を閉じて大人しくしている。【このは】「いいなあ、仲良しで……」
【 優 】「触る?」
【このは】「触らせてくれるかな?私、まだ一度もビビに触らせてもらえた事がないんだけど……」
【 優 】「そろそろ大丈夫だろ。ほら」
【このは】「じゃあ、少しだけ……ビビ、触ってもいいかな?」
声をかけても、ビビは反応しない。
ただ、大きな黒い目でこちらをじっと見つめるだけ。(大丈夫かな……)
緊張に震える手を、そっとビビの頭に乗せる。
(……あ!)
【このは】「で、出来た! 触らせてもらえた!」
【 優 】「いい加減、あんたの顔、覚えたんだろ」
【このは】「そっか……! 良かった!」
【このは】「ふふ、優さんの相棒に認められて嬉しいなあ。 ビビ、いい子いい子……」
【 優 】「何言ってるんだか」
【 優 】「けど、あまり触らない方がいい。しつこいと嫌がるから」
優さんはつけていたアクセサリーを専用ボックスへしまいながら、助言をくれる。
【このは】「そっか……。じゃあ、この辺にしておこうかな」
-
SHINOMUNE Encore Scenario
【このは】「~~……♪」
少しずつ綺麗になっていくのが楽しくて、ついつい鼻歌を歌ってしまう。
(……うん! だいぶ片付いたな)
掃除を終えて一息つき、ふと窓の外に目をやると、とてもきれいな青空が広がっていた。
(今日は良い天気だなあ……! 外にお出掛けしたい気分になるよ)
そんなことを考えていると、篠宗さんが声を掛けてくれる。
【篠 宗】「疲れたか? すまないな。オフなのに掃除を手伝わせて」
【このは】「いえ、私がしたくてやってる事なので気にしないでください!」
【このは】「どこかにお出掛けしたくなる陽気だなって思って見ていただけなんです」
【篠 宗】「せっかくだし、今から出掛けてみるか?」
【このは】「えっ、いいんですか?」
【篠 宗】「いいも何も……恋人が出掛けたいと言ってるんだ、俺もそれに付き合いたい」
(あ……)
恋人……その甘酸っぱい言葉を篠宗さんから聞く度、私は彼とお付き合いしているんだと実感する。
同時に、少しだけの申し訳なさとそれ以上の喜びに心が震えた。
【篠 宗】「ついでに、スーパーで買い物をしよう。どうだ?」
【このは】「いいですね! 賛成です」
【篠 宗】「よし! 決まりだな。それじゃあ、出掛ける準備をするか!」