【美羽】「耳が聞こえない時があるんでしょ」
【夕星】「っ!」
夕星はばっと顔を上げる。
【夕星】「……」
さっきとは比べ物にならないほど怒りに満ちた顔をした夕星。
その顔を見れば、答えは明白だった。
【美羽】「やっぱりね……」
これでやっと離れてくれる……そう思っていた私が間違いだった。
夕星の手が離れたと思ったら、私の首に回っていた。
そのままぐっと抑えこまれ、一瞬で呼吸が出来なくなる。
【美羽】「ひ……はっぅ……!」
頭に血が集まっていく。
喉が痛い、苦しい……。
【夕星】「だったらなんだよ。それがあんたと何か関係あんのかよ」
【美羽】「ぁ、ぐ……!」
更に力を入れられ酸素が回らなくなり、視界がぼやける。
(息苦しい、気持ち悪い……!)
【夕星】「ねえ、苦しい? 苦しいよね?
このまま僕が力を入れ続けたら、死んじゃうかな?」
【美羽】「うっ、ぁ……」
【夕星】「死ぬのは誰だって嫌だよねぇ。あんたも死にたくないでしょ?」
【夕星】「だったら約束してくんない?
これ以上この話はしない。もう僕に踏み込まない」
【夕星】「それが約束出来たら、離してあげる」
――コクリ。
その瞬間、夕星の手が離された。
一気に酸素が入ってきて、胸が痛む。
【美羽】「げほっ! げほっ! げほっ!」
思わずむせる私を、夕星は冷たい目で見下ろす。