【翼】「そうだ。そのメガネが悪いんじゃないか? 取ってみろ」
【忍】「は?」
【桔平】「確かに! 忍って素の顔は色気があるもんな」
【裕貴】「んじゃ取ってみるか」
裕貴は笑いながら手を伸ばし、黒沢さんのメガネに指をかけた。
【裕貴】「ていっ!」
【忍】「おいっ」
【美羽】「あ……」
桔平達の言う通り、メガネを取った黒沢さんは
また違った雰囲気があった。
整った顔立ちをしていて、モデルだと言われても納得する。
【翼】「やっぱりこっちの方がいいな」
【桔平】「よーし、じゃあ忍は今日このまま過ごす事!」
【忍】「無茶言うな。メガネを返せ。見えん」
【裕貴】「なんとなーく、くらいなら分かるだろ」
裕貴は奪ったメガネを掲げながら、
わざとらしくニヤニヤ笑っている。
【忍】「無茶言うな。本当に……何も見えないんだ」
【美羽】「黒沢さんって、そんなに目が悪いんですか?」
【忍】「その声は……柊か。ああ、メガネがないと何も見えない」
【美羽】「じゃあ、大変じゃないですか。大丈夫ですか?」
【忍】「大丈夫、じゃない。おい裕貴、メガネを返せ」
言いながら、なぜか私の方に向かって顔を近づけてきた。
【美羽】「く、黒沢さん!?」
【忍】「いい加減にしろ、裕貴。さっさとメガネを返せと言っている」
【美羽】「私は裕貴じゃありません!」
【忍】「どこをどう見ても裕貴だろ」
【美羽】「性別からして違います!」
否定しているのに、黒沢さんは私を裕貴だと信じ込んでいる。
(私、そんなに女らしくないかな!?)
近距離にいる黒沢さんの顔に心臓がもたない反面、
すごくショックを受けてしまう。
【裕貴】「目が見えない上に酔ってるから、余計理解出来てないんだな」