DYNAMIC CHORD | 公式ブログ

love U kiss series vol.13～Kuro～
04.手のひらの微熱

love U kiss series vol.14～UK～
02.リンゴをむいてくれないか？

love U kiss series vol.13～Kuro～
01.それでも好きでしょう？

忍　「ん？　なんだ、服の裾を引っ張って」
忍　「……ここにいて欲しいのか？」
忍　「さっき言った言葉の意味が理解できていないようだな」
忍　「俺も、男だ。もっと危機感を持てと、言ったばかりだろう」
忍　「謝ったってもう遅い。……こっちに来なさい」
忍　「キスが苦いか？　今は優しくできる余裕がないんだ」
忍　「お前は忘れているのかもしれないが……以前お前が外で酔ったとき、俺は言ったはずだ」
忍　「もし、またあんな風に酔っ払ったら、今度は説教じゃ済まない、と」
忍　「確かに、今回は一人で飲みに行ったわけじゃなかったが」
忍　「どちらにしろ、俺が心配したことには変わらない」
忍　「どうするのか？　そうだな、俺が満足いくまで付き合ってもらおうか」

有紀　「……すー………………んんっ……」
有紀　「ん……ふはっ、はははっ……く、くすぐったいって……はははは……」
有紀　「な、何するんだ……！　くすぐったいだろ……」
有紀　「はぁ？　ひまつぶしにほくろの数を数えてたって……やめろ。増えるだろ！？」
有紀　「背中？　やだ、背中は見せないからな」
有紀　「分かった。起きる。起きるから、ほくろを数えるのはやめような。はぁ……朝から疲れた」
有紀　「んで、どうしたんだよ？　いつもはこんなことしないだろ。構ってほしいのか？」
有紀　「なんで黙ってるんだ。何も言わないと分からないだろ？」
有紀　「……ほーら、おいで」
有紀　「…………来ないのか？」
有紀　「構って欲しいのか、拗ねてるのかどっちかにしろよ」
有紀　「そっちがその気なら……」

＼ここからは、成海ルートをクリアしていない方にはネタバレになってしまうのでご注意ください！／


このお話は、scene38【京都観光～お揃いの恋のお守り～】で、おみくじを引いた後と、
家に帰った後のシナリオの間に入る予定だったお話です。
成海ルートはボリュームが多かったので削ってしまったので、こちらでご紹介します！

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【京都観光～お揃いの恋のお守り～】

京都観光を楽しんだ後、帰りの新幹線で、私達は指定席を６席取ることにした。

本来ならグリーン席を、となるんだけれど、グリーン席は２席ずつになっているから、５人だとどうしても誰かが１人で座らないといけなくなってしまう。

メンバーがそれぞれ２人ずつ座ることを考えると、私が１人で座ることになるんだけれど……。

『美羽ちゃんが１人で座るなんて、そんな寂しい思いをさせられないよ！　絶対ダメ！』

と、成海君が気遣ってくれたので、６席取って座席を回転させ、みんなで向かい合って座ろう、ということになったのだ。

座る場所は、夕星がどうしても通路側がいいというので、私が窓側、成海君が真ん中で夕星が通路側だ。

私の向かいに有紀、その隣に黒沢さんが座ることになった。

【夕星】「これでのんびり座れるよぉ～」

そう言って夕星は、向かいの空けてある席に、思いきり足を乗せた。

【夕星】「僕って足長いからぁ～、飛行機の中も、行きの新幹線もちょお狭くて苦しかったんだよねぇ」

【有紀】「……忍」

【忍】「分かった」

黒沢さんは立ち上がると、夕星の足を思い切り膝で打った。

ゴッ！　という鈍い音と共に、夕星が足を下ろし、叫び声を上げる。

【夕星】「何すんだよ！」

【忍】「何をするんだはこっちの台詞だ。次にそんな姿勢を取ってみろ。足１本じゃ済まないぞ」

【夕星】「ぶー！」

【成海】「東京まで２時間ちょっとだから、それまで我慢しようよ。夕星」

【夕星】「ぶぶー」

成海君が言っても、夕星は膨れ面のまま。

【有紀】「ご機嫌斜めの夕星ちゃん、どうやったらご機嫌を直してくれまちゅか？」

【夕星】「バカにすんなぁ～！！」

【忍】「うるさいぞ、お前ら。静かにしろ」

【成海】「もう～夕星も有紀も大人しくしなよ。美羽ちゃんが呆れてるよ。ねぇ？」

【美羽】「もう見慣れちゃった」

【夕星】「ブス、何か言った？」

【美羽】「はぁ！？　誰がブスよ！」

【夕星】「誰か言わないと分からないのぉ～」

【美羽】「むっきー！！」

【有紀】「あらら、今度は夕星と美羽がケンカを始めたよ」

【忍】「夕星、静かにしろと言っているのが分からないのか」

【成海】「美羽ちゃんも、落ち着いて」

夕星は黒沢さんに、私は成海君に止められ、お互いにらみ合ってから、フンっと視線を逸らした。
そんな私達の元にワゴン販売車がやって来て、それに気付くと、夕星がさっと手を上げる。

【夕星】「お弁当くださーい！　あと、お姉さんの電話番号も教えてほしいなぁ？」

【有紀】「おいおい、こんなところでナンパするなよ」

【夕星】「なぁに？　有紀も知りたいなら知りたいって言えばいいじゃん」

【有紀】「あのなぁ……。まあ、でも、確かに腹は減ったよな。弁当食べるヤツ手ぇ上げて」

５人全員の手が上がり、ワゴン販売車のお姉さんに笑われてしまう。
私達も苦笑しながら、それぞれ好きなお弁当を注文した。
支払いは遠慮したけど、迷惑をかけたお詫びだと、黒沢さんが済ませてしまったので言葉に甘えることに……。

【美羽】「ありがとうございます、黒沢さん」

【成海】「忍、ありがとう！」

【夕星】「くろくろありがとぉ♥」

【有紀】「黒沢先輩、ありがとうございます」

それぞれお礼を言うと、有紀にだけつっかかったものの、黒沢さんは照れくさそうにはにかんでいた。

【成海】「俺、新幹線でお弁当食べるの憧れてたんだ～」

【夕星】「飛行機でお弁当食べてるじゃん」

【成海】「それとこれは違うんだよ！　飛行機はよく乗るけど、新幹線ってあまり乗らないし……」

【美羽】「私は、移動中しか食べる時間がなかったから、新幹線の中のお弁当って、とにかく急いで食べてたな。食べたら少しでも寝たかったし……」

【有紀】「食べてすぐ寝るって、太るぞ？」

【美羽】「うっ……だって、忙しいんだもん！　仕方ないじゃない」

【有紀】「ははは。分かってるよ。冗談。悪かった」

【成海】「美羽ちゃんは、太ってないし綺麗だから、そんな心配しなくても良いと思うよ？」

【美羽】「うっ……」

（い、今、成海君、私の事を綺麗だって言ったよね？　幻聴じゃないよね？
　幻聴じゃなかったら、夢……？　今、私、寝てたの！？）

【夕星】「ははっ、ブスがまっ赤になってリンゴみたいになってるぅ～」

【有紀】「成海に褒められて良かったな」

（夕星と有紀がからかうってことは夢じゃないの！？　これ現実なの！？
　す、すごい……！　今の言葉録音しておきたかったよぉ～～）

【美羽】「うぅ……」

【成海】「えっ、美羽ちゃん、どうして泣きそうな顔をしてるの？　俺、何か変な事を言った？」

【有紀】「成海、大丈夫だ。嬉しいだけだろ」

【成海】「そうなの？」

【夕星】「なるなるは鈍感だからねぇ～」

【忍】「……お前らはさっきから騒がしいぞ。大人しく出来ないのか」

【美羽】「す、すみませんでした」

【成海】「忍、ごめんね？」

【夕星】「くろくろ、ごめんなさぁ～い♥」

【有紀】「ごめんなさい、黒沢先輩♥」

【忍】「有紀のは、反省の色が見えない。やり直せ」

【有紀】「えっ、俺だけ？　何で俺だけやり直しなんだ？」

有紀がやり直しているのを、私達は笑いながら見つめていた。
なんだか、嬉しくて、楽しくて。
ずっとこんな時間が続けばいいな、なんて思ってしまう。

そんな事を考えていると、成海君が小さな声で「あ」と呟いた。

【美羽】「どうしたの？」

【成海】「俺、大事な事を思い出した！」

【有紀】「どうした？　何かあったのか？」

【成海】「明後日は１７日だよね？」

【夕星】「そーだねぇ」

【美羽】「うんうん」

【成海】「って事は……もうすぐ忍の誕生日だよ！！！」

【忍】「……そういえばそうだったな」

当の本人はどうでもよさそうな顔で、黙々とお弁当を食べている。

【成海】「そういえば、じゃないよ！　俺、忍の誕生日を祝いたい！」

【忍】「気持ちは嬉しいが、今更祝う年でもないんだ。気にしなくていい」

【成海】「誕生日を迎えたら●●（※１）でしょ！　まだまだ若いし、今からおじさんみたいな事言わないでよ！」

【忍】「もう●●歳、だ」

【成海】「もうそんなのどうでもいいよ！　とにかく俺は、忍の誕生日を祝いたいんだ。
　そうだ！　今からここで歌うよ！　前祝いってことで」

【有紀】「成海、さすがにそれは他の人に迷惑だからやめような」

【成海】「そっか……」

明らかにしょげてしまう成海君に、私も有紀もどうしていいか分からず、顔を見合わせる。

すると隣の夕星が、食べ終わったお弁当を膝に乗せたまま、成海君の頭に手を乗せた。

【夕星】「ねえ、成海。祝うのってさ、別に何かしなくてもいいんだよ」

【成海】「え……」

【夕星】「祝う気持ちと言葉があれば、それで十分。僕も……あの時、嬉しかったしね」

【成海】「夕星……」

成海君はいつものキラキラした瞳を黒沢さんに向ける。

【成海】「そうだね。今は、我慢する。でも、忍が誕生日を迎えた時は、たくさん祝いたいから……その時は、俺の歌を受け取ってくれる？」

【忍】「ああ。当然だ」

【美羽】「私も言いたいです！　黒沢さん、お誕生日おめでとうございますって！」

【夕星】「じゃあ、僕も言ってあげなくもないよぉ。くろくろ、誕生日おめでと～って一応言ってあげるね」

【有紀】「んじゃあ、俺も黒沢先輩の誕生日を祝いますか」

【忍】「……そんなに気に入らないのか？」

【有紀】「気に入らないよ。でも、それが忍の決意って言うなら受け入れなくもない。けど、気に入らないのは気に入らない。そのうち慣れるから、もう少し待って」

少しいじけた顔をしていたけど、本当は、有紀も黒沢さんの誕生日を祝いたいという気持ちは伝わってきた。

【忍】「ああ。分かった」

【夕星】「ゆっけ、ガキだよねぇ～」

【有紀】「夕星ちゃんには負けまちゅ」

【成海】「忍の誕生日にはサプライズをするんだ！」

【美羽】「成海君、それ今、言っちゃったら……」

【成海】「あっ……」

慌てて口をふさいでから、成海君は窺うように黒沢さんを見て「今の、聞こえた？」と小さな声で聞いた。

成海君の行動がおかしくて、可愛くて、私と夕星と有紀は目を合わせてから、必死で笑いを堪えた。
黒沢さんがなんて答えるか待っていると……。

【忍】「いや、何も聞こえなかった。隣にいる奴がうるさかったからな……」

【有紀】「えっ、俺かよ」

【成海】「よかった～～」

安心したように笑う成海君を見て、黒沢さんはメガネをくっと押し上げる。

その頬が、夕焼けの橙を写したように赤くなっていたけれど、みんなあえて黙って、笑い合った。

※１　メンバーの年齢はゲーム内でお確かめください。

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ほのぼのとしたapple-polisherとの一時を楽しんでもらえたら嬉しいです！